ソーマとは(『すばらしい新世界』)

ソーマとは(『すばらしい新世界』)

英国で1932年に出版された、オルダス・ハクスリーのディストピア小説『すばらしい新世界』では、ソーマと呼ばれる錠剤が描かれる。ソーマとは、多幸感や快楽、心地よい幻覚作用をもたらす薬で、副作用もなく、政府から配給される。ソーマは、フォード紀元178年(2086年)に2000人の薬学者と化学者に研究助成金が支給され、開発、その6年後には商業ベースで生産が開始される。人々は、睡眠時学習によって「一立方センチのソーマは十人の憂鬱を癒す」とソーマの効用が教育される。登場人物の一人、バーナード・マルクスは、本来の階級である上位階級のアルファの人々とは違う小柄なガンマ階級の姿で生まれ、それゆえ劣等感に苦しみ、孤独感にさいなまれる。しかし、多くの人々がソーマを気楽に使用するなかで、彼は滅多に服用しない。

「暗いぞ、マルクス、暗い暗い」ぽんと肩を叩かれたバーナードは、驚いて顔をあげた。あの人でなしのヘンリー・フォスターだった。「そんなときは、一グラムのソーマだ」 – オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』

この「すばらしい新世界」では、無用な考え事などせず、悲しみもなく、現実感から逃れるためにソーマが頻繁に活用され、安定的にたのしい気分が保証されるのだ。

不運にも充実した時間にぱっくり裂け目が開いてしまったときには、ソーマがある。甘美なソーマがある。半グラムで半日休暇をとったような効果、一グラムで週末を愉しんだような効果、二グラムで豪華東洋の旅を満喫したような効果、三グラムで永遠の間に浮かぶ月世界に遊んできたような効果がある。 – オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』

ちなみに、ソーマという名称は、インド神話に出てくる興奮や幻覚をもたらす神々の飲み物に由来する。

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