グレートリセットとは
グレートリセットという言葉が、なぜか触れてはいけない都市伝説や陰謀論の類のような扱いを受けているように思う。でも、別にグレートリセットは、公然と語られている国際的なテーゼであり、コロナパンデミックや雇用市場の変化、気候変動などの問題に対し、今後、「より良い世界のために、これまでの社会システムを根本から見直すこと」を意味する言葉だ。
わかりやすく言えば、グレートリセットとは、「国際エリートたち」が考える、世界的な「革命」と言えるのではないかと思う。
このグレートリセットを積極的に提唱しているのが、世界の政財界を代表するリーダーが一堂に会する世界経済フォーラムのダボス会議である(日本からは、竹中平蔵氏が理事に就任している)。
ダボス会議とは、スイス・ジュネーブに本拠を置く非営利財団、世界経済フォーラムが毎年1月に、スイス東部の保養地ダボスで開催する年次総会です。世界経済フォーラムは1971年に発足し、各国の競争力を指数化し公表してグローバル化に対応した経営環境を推進しています。この会議では毎年、世界を代表する政治家や実業家が一堂に会し、世界経済や環境問題など幅広いテーマで討議しますが、各界から注目され、世界に強い影響力を持っています。日本からも首相や著名な経済学者などが参加しています。
そのダボス会議の2021年のテーマが、「グレートリセット」であり、世界経済フォーラムの公式のYouTubeチャンネルでも、グレートリセットというタイトルの短い映像が公開されている。
The Great Reset|World Economic Forum
コロナ騒動を契機に、別の言い方をすれば「利用」し、社会のあり方を根本から「リセット」しよう、ということだ。映像には、リセットボタンを押す指が出てくる。正直、気持ち悪い演出だと思う。あの「指」が、一部のエリートたちの意思であり、思考の象徴なのだろう。また、岸田首相も、世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ(Klaus Schwab)会長に対し、2022年にオンラインで行われた「ダボス・アジェンダ2022」のスピーチではっきりと、「我々は、グレートリセットの先の世界を描いていかなければなりません」と語っている。
加えて、シュワブ会長は、文字通り『グレートリセット』という本も2020年に出版している。この本の序文で、シュワブ会長は、もうコロナ以前の元の世界には戻れない、と書いている。
多くの人がこう考えている。いつになったら、ノーマルな生活に戻れるのだろうと。シンプルに答えよう。戻れないのだ。戻る先が、危機の前はごく当たり前だった、今や「打ち砕かれた」日常を指すなら、何も元通りにはならないのである。なぜなら、パンデミックを機に、世界の方向性が根本的に大きく変わるからだ。
(中略)
私たちはまだまだ、あまりにもはやい変化や想定外の性質に驚き続けることになる。変化が変化を呼び、それが第2、第3、第4、と副次的な結果を生み、その影響や想定外の結果が雪崩のように大きくなっていく。そこからやがて、「新しい日常」が形作られるが、これは私たちが過去のものにしようとしているかつての日常とは決定的に違うものだ。
– クラウス・シュワブ『グレート・リセット』
こういう一連の発言などを見ても、コロナ騒動が、ワクチンに関するあれこれ以外に、完全に政治的に利用されていることは明らかだろう。そもそも、日本でも、まるで示し合わせたように、「新しい日常」やら「新しい生活様式」といった不気味な用語が登場し、押し付けられていること自体に違和感しかない。どう考えても、世界経済フォーラムの「グレートリセット」の流れに従っているように見える。
デジタル化は #新しい日常 の原動力であり、菅官房長官の #デジタル庁 構想を強く支持します。政府全体に横串を刺す。保健所のコロナ感染者情報が手書きFAXだったこと、多くの自治体が特別定額給付金のオンライン申請を断念したことなど、課題山積。私の立場でもデジタル化を強力に推進します。 pic.twitter.com/zSB3EEaN5E
— 西村やすとし NISHIMURA Yasutoshi (@nishy03) September 8, 2020
クラウス・シュワブ会長は、2022年4月に、岸田首相のもとを訪問し、にこやかな写真を公開している。
また、岸田首相は、2023年のダボス会議に出席する予定となっている。その他、WHOの新組織の日本設立の話然り、WHOの権限を強化する「パンデミック条約」が動き始めていること然り、着実に薄気味悪い動きが進んでいるように思える。
>>岸田首相、ダボス会議に出席する方向で調整 来年1月には訪米も打診|朝日新聞
>>感染症「条約」策定へ 新型コロナ教訓にWHOが協議開始|産経新聞
国際ジャーナリストの堤未果さんが書いた、あらゆるもののデジタル化によって管理社会が進行していくことの危険性を指摘する2021年の著書『デジタル・ファシズム(NHK出版)』のなかにも、グレートリセットに関する記述が出てくる。
世界のエリート集団が描く、デジタル新世界「グレート・リセット」
あらゆるものをデジタル化し、5Gでつないだスーパーシティの先にあるのは、一体どんな世界だろう?
人間はデジタルテクノロジーを使った第4次産業革命によって、今の資本主義は一度リセットし、次のステージに移行しなければならない。「グレート・リセット」を呼びかけるメッセージを、世界に向けて毎年発信し続けているエリート集団がいる。
2016年。
世界経済フォーラム創設者であるクラウス・シュワブ氏は、その著書『Shaping the Fourth Industrial Revolution(第4次産業革命を生き抜く)』の中で、これから来る第4次産業革命についてこんなふうに予測した。
そこでは全てをつなげる5GやAIなどの新しい技術が、日常を送るうえで必要な様々な事柄を本人の代わりに決定していくようになるという。そして私たちの小さな行動から個人的傾向、人間関係に至るまで、24時間デジタルで監視された個人データが、フェイスブックやファーウェイやグーグルのような、一握りの巨大プラットフォーマーの元に集められていくようになる。
政府が私たちの頭の中に侵入し、私たちの思考を読み取り、行動にまで影響与えることを可能にする世界。シュワブ氏はそれらが、革新的な技術の進化と共に、物理的制限を超えてゆくだろうと断言する。
手首に装着するサイズのコンピューターから、3次元の音と映像を映し出すバーチャル・リアリティー・ヘッドホンまで。やがてデバイス自体が肌の奥や脳に移植される時代が来るのは、ほぼ確実なのだ、と。
私たち人類の前に、肉体とデジタル、個人のアイデンティティを融合させる技術(すでに完成済みだ)を伴う「第4次産業革命」がもたらす、新世界の扉が開きつつあるというシュワブ氏の予測は、彼が創設した世界経済フォーラムの理事たち───世界的な金融大手の経営陣や欧州中央銀行、国連やIMF(国際通貨基金)のトップ、中国の億万長者、その他著名なメガ投資家たち───にとって、大いに賞賛に値する内容だった。
人間の脳は、特定の条件下でドーパミンを分泌する。新しいものに出会う時、リスクが伴う時、そしてそこに「報酬が期待される時」だ。彼らの脳内で、第4次産業革命への期待と興奮がさざ波のように広がっていく。
そしてそこから、それぞれが世界規模の人脈と巨額の資金力を使い、グレート・リセットという一つの共通ゴールに向かって、各地で動き始めたのだった。
– 堤未果『デジタル・ファシズム』
このグレートリセットの次の項では、デジタル身分証明書、デジタルIDで人々を管理するID2020計画に関する記述もある。ID2020は、難民などを救うという人道上の目的という名目で、「全ての難民に電子IDを付与し、一括で管理する」国際プロジェクトだと言う。出資者の中心はロックフェラー財団で、最新技術を使ったデジタルID管理システムを推し進めようとしている。また、医療分野では、皮下マイクロチップによって接種記録を管理する、というシステムも考えられている。
医療分野では、皮下に埋め込むマイクロチップを使った国際的なデジタル認証システムによって、途上国でのワクチン接種記録を管理するプロジェクトが進行中だ。
〈ID2020〉の主要メンバーであるマイクロソフトの創業者ビル・ゲイツ氏の要請でこの技術研究を進めるマサチューセッツ工科大学の研究者ロバート・ランガー博士は、ワクチンと一緒に皮下に安全に埋め込み、特別なスマートフォン・アプリとフィルターを通すと表示されるインクを開発中だ。
「このアプローチはやがて、途上国の医療問題を解決するだろう」とランガー博士は述べ、〈ID2020〉は現在バングラデシュで試験的に導入されている。
– 堤未果『デジタルファシズム』
分かりやすくシンプルに言えば、グレートリセットとは、環境問題や感染症対策などを名目とした、グローバリスト、国際エリートによる、世界的なデジタル管理社会化ということではないかと思う。あるいは、クラウス・シュワブ氏自身も、「中国の統治システムが各国のロールモデルになる」と語っているように、世界の中国システム化と言ってもいいのかもしれない。
パンデミックにせよ、気候変動を軸とした環境問題にせよ、「解決」するために自然と人間を管理し、支配する必要がある。張り巡らされたデジタルの檻のなかで、たとえば人間が、どれだけ移動し、何を食べ、どんな「環境に悪い」ことをしたか、といったことを逐一監視し、データ保存する。問題となる人間にはペナルティを与える。彼らの価値観にとっての「善」を行えば、ある程度の自由が許される。あるいは、特典が与えられる。そういった世界の形に、着実に工事していっているように思う。
また、堤未果さんは、「デジタル・ファシズム」の次の著書で、「フードテック・ファシズム」という視点からも、世界の流れを批判的に見る。
SDGsの名の下、気候変動や食料危機を解決する夢のテクノロジーとして、ゲノム編集や合成生物などのフードテック、デジタル農業が台頭。「政府やマスコミ、学者などによって、飢餓など“恐怖”を煽られ、“この道しかない”といわれる時、私たちは注意しなければなりません。」https://t.co/UDvClGDqDw
— 付箋 (@KDystopia) December 17, 2022
こうした動きは、本当に地球規模のパンデミックや環境危機のために賢い人たちが考え出した方策なのだろうか。それとも、一部の上級層だけが自由と享楽を謳歌し、その他の多くの人々を支配、管理しやすい(奴隷や家畜にするための)仕組みの構築だろうか。
いずれにせよ、世界的なエリートが考えたことだからと言って「正しい」とは限らない。場合によっては、当時は反対する声が少数で異端であり、エリートや多数派が賛同していたものの、歴史を振り返ってみた際に、とんでもない悪だった、ということも十分あるだろう。もちろん、そういった方向を目指す人たちがいる、ということ自体は構わない、というか、仕方がないと思う。ただ、このグレートリセットの方向性に関し、日本の国内政治的に、なぜ議論が行われていないのだろうか。なぜマスコミでも、ほとんど取り上げられないのだろうか。
世界的なエリートが、大きな一つの方向性を決め、それぞれの国家は、問答無用でその流れに従わなければいけないのだろうか。全く触れず、都市伝説のような扱いを受けながら、着々と進んでいるように見えることに疑問と不安を覚える。