プロールとは(『1984年』)

プロールとは(『1984年』)

ジョージ・オーウェルの描いたディストピア小説『1984年』には、「プロール(別訳では「プロレ」)」と呼ばれる階層が存在する。プロールとは、党とは関わりがなく、貧しく、思慮に浅く、虐げられた人々として描かれる。

プロールの語源は、労働者を意味する「プロレタリア」の略で、人口の大半を指す被支配階級の労働者に当たる。プロールは、酒やギャンブル、スポーツ、セックス、また、プロレフィード(プロールの餌)と呼ばれる党制作の無害な小説や映画、ポルノなどを与えられ、識字率は半分以下で、テレスクリーンを持っていない人も多いことから、監視社会の外側にいる。

党は、このプロールが、社会を転覆させるような力を持っているとは全く見ていないし、思想の教育もされない。放し飼いの動物のように見ている。以下、『1984年』で、プロールについて説明ないし描写された部分をいくつか引用する。

もし希望があるのなら、プロールたちのなかにあるに違いない。なぜなら、かれらのなかにのみ、オセアニアの人口の八十五パーセントを占める、あのうようよと溢れかえるほどの無視された大衆のなかにのみ、党を打倒するだけの力が生み出され得るからだ。- p108

生まれ落ちると極貧の環境で育ち、十二歳で働きに出る。美しさと性的欲望に彩られる束の間の開花期を経て、二十歳で結婚。三十歳で中年に達し、大多数は六十歳で死ぬ。きつい肉体労働、家庭と子どもの世話、隣人とのつまらぬいざこざ、映画、サッカー、ビール、そして何よりギャンブル、それがかれらの心を占めるすべてである。- p111

かれらは全体を見通す考えを持たないので、不満をいくつかの取るに足らない個別の原因に帰着させるより他なかったからである。かれらはもっと大きな悪の存在には絶対に気づかない。- p111

 – ジョージ・オーウェル『1984年』

プロールは、日々の苦しい労働と、家族の世話、隣人との争い、映画、サッカー、ギャンブルで占められる。不満があったとしても、身近な、個別の原因に帰着させ、もっと大きな悪の存在に気づくことはない。しかし、主人公のウィンストンは、そのプロールのなかに秘められた力にこそ、状況を打開する力が隠されているのではないか、党は彼らをこそ恐れているのではないか、と考える。

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