安心の計算式

安心の計算式

安心と一口に言っても、現象の問題と、感受性の問題と、両面がある。感受性が複合的な原因(ストレスが溜まっていたり、体調的な面など)によって鋭敏になっているときには、僅かなことでも不安感が刺激される。

たとえば、治安で考えてみる。全体の数として殺人事件が減っていたとしても、治安が悪くなっている、と感じる人もいる。事件数の推移を記したグラフを使用し、理性的に説明しようと試みても、一向に安心感は広がらない。なぜなら、治安というのは事件数だけの問題ではなく、「事件数(現象)×不安の感受性(感受性)」だからである。不安感が強い状態を仮に1000とすれば、事件数が1でも、治安は悪いと感じる。逆に、心身が落ち着き、不安の感受性が10だったとすれば、事件数が5であっても、治安が悪いとは感じづらくなる(あまりに不安が強くなり、感受性が麻痺し、0になる、という場合もある)。

もちろん、治安の捉え方には中間に様々な別の要因もある。動機が分からない不条理な事件が増えれば、対策をして避ける術がないゆえに不安感が増す。自分の性別や年齢、財政状況といった状態でも変わってくる。Xは無数にある。とは言え、もっとも重要かつ不可欠な要素が、現象と感受性という両極であり、それゆえ、不安は決してゼロにはならない。なぜなら、死と心があるからである。

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