ビットコインとクライオニクス、創設者の遺体はアルコー延命財団で冷凍保存

ビットコインとクライオニクス

仮想通貨「ビットコイン」は、正体不明の人物サトシ・ナカモトの短い論文から始まった。そして、その無味乾燥な論文を「ビットコイン」という形に仕立てた、ビットコイン創設者の一人と言われるのがハル・フィニーである。

ハルは、石油技術者を父に持つ四人兄弟の一人として育った。子供の頃から未来世界を夢想し、SF文学から微積分まで読みこなしていった。

カルフォニア工科大学に進学し、知的好奇心はハルを更なる勉学に駆り立てた。

この好奇心はやがて「人体」にも向けられた。人体を冷凍保存した後に生き返らせる可能性を描いたラリー・ニーヴンの小説をきっかけに、ハルはクライオニクス(人体冷凍保存)に興味を持った。

 

参照 : クライオニクスの「意味」 、人体冷凍保存で再生を待つ日本人女性「ミチコ」

 

そして、クライオニクスの研究機関であるアルコー延命財団にたどり着くと、財団の機関紙を購読。その後、自分と家族の遺体をアルコー延命財団に冷凍保存する契約金も支払った。

このクライオニクスと同様、ハルの興味を駆り立てたのが仮想通貨「ビットコイン」だった。

ビットコインは、政府からの監視や影響を逃れ、個々が独立した関係性を結ぶことができる。通貨は匿名性が高いが、デジタル化した途端、銀行などの第三者が介在し、プライバシーは危機に晒される。

デジタル通貨の世界では、常に「自分は誰か」を権力に明かさなければいけない。「自由な社会には、匿名性のある取引システムが必要である」

ハルは、ビットコインの登場より遥か昔、90年代前半に匿名のデジタル通貨構想を考えたことがあった。

その際、超監視社会を描いたジョージ・オーウェルのディストピア小説『1984年』に登場する「ビッグブラザー」に喩えて次のように言っている。

僕らが今ここでしているのは、広い意味では“ビッグブラザー”を過去のものにするという目標に沿った行動だ。とても重要な取り組みだよ。

うまくいけば将来振り返ったときに、あれが自分の手がけたなかでいちばん大切な仕事だったといえるかもしれない。

その後、サトシ・ナカモトの「ビットコイン」の論文と出会い、以来、仮想通貨の創設と成長に携わったハルだったが、途中、原因不明の難病ALSにかかる。

ハルは次第に喋ることも、歩くこともできなくなっていき、ビットコインからも遠ざかっていった。

そして、2014年8月、ハル・フィニーは58歳で死去。遺体は、生前のハルの希望通り、アルコー延命財団によって冷凍保存された。

フィニー氏の友人でエクストロピー研究所創業者のマックス・モア氏は同日、フィニー氏の遺体は死亡確認後、アルコー延命財団のチームによって冷凍保存されたと発表した。フィニー氏は生前、人体冷凍術の発展に貢献するため、自身の冷凍保存について公表するよう希望していたという。

同氏の遺体はマイナス196度(摂氏)で、ALSの治療法が確立される未来まで保存される見込みだ。

ITmedia「ALS罹病の暗号化研究者ハル・フィニー氏が死去、遺体は冷凍保存」より