サイファーパンクとは

サイファーパンクとは

サイファーパンク(cypherpunk)という言葉の由来は、暗号を意味するcypherとpunkを組み合わせた造語で、2006年にはオックスフォード英語辞典にも記載される。

サイファーパンクの起源は、1992年に設立された数人の小集団である。

その際、冗談交じりに「サイファーパンク」と名付けられ、その後、サイファーパンクはメーリングリストを中心に規模を拡大。二年後の1994年には700人が購読するようになった。

サイファーパンクのメーリングリスト内では、数学や暗号学、思想、政治学や哲学的な論争など、様々なことが議論された。

サイファーパンクの設立と活動の目的とは一体何か。

 

サイファーパンクの目的

サイファーパンクの目的は、その名称に由来するように、「暗号」によって絶対的な権力に抵抗し、自らの自由を確保することにあった。

インターネットは世界を開かれたものにしたが、一方で、開かれた世界では全てが筒抜けになる、という致命的なデメリットがある。

しかも、権力者の透明化が進み、個々人のプライバシーが守られるのではなく、逆に一部の権力者たちに情報が集中し、個々のプライバシーが掌握されていくのである。

IT関連企業のAppleは、かつて「ビッグブラザー(ジョージ・オーウェル『1984年』)」をモチーフにしたCMを製作している。

ビッグブラザーとは、オーウェルのディストピア小説「1984年」に登場する、正体不明の絶対的な独裁者だ。いつでも、どこでも、「ビッグブラザーがあなたを見守っている(Big Brother is watching you)」という監視下に人々は置かれる。

しかし、このApple自体が、今や「ビッグブラザー」の一翼を担っている、という皮肉的な現状がある。

また、Appleだけでなく、GoogleやFacebookなど、人々のあらゆるプライバシー情報をインターネット技術が把握し、政府含め権力に提供している実態が明るみとなった。

GoogleやAppleの新しい「透明性レポート」によると、両社に提出された政府からのデータ提供要求が増加しており、あるプライバシーの専門家はこの監視活動を懸念している。

出典 : GoogleやAppleへの政府からのデータ提供要求が増加、不透明な監視活動の声も

今や人々のプライバシーは、国家の諜報機関と、一部の多国籍企業が管理している。

こうした権力複合体によるプライバシーの介入に対し、サイファーパンクは、「暗号」によって武装せよ、と呼びかける。

サイファーパンクの主要なメンバーの一人であり、強固な暗号技術に担保されることによって匿名でリークできるシステム「ウィキリークス」を創設したジュリアン・アサンジは、「暗号的武装への呼びかけ」という文章のなかで、個々が情報を暗号化することで、権力の介入を阻止することができる、と語る。

medium.com/@Genius50

また、「宇宙は暗号化を信じている」と書き、そして、暗号こそ「究極の非暴力な直接行動である」と宣言する。

宇宙、われわれの物理宇宙は、個人や個人の集団が、確実に、自動的に、それと知らぬ間に、何かを暗号化し、地上で最強の権力のすべてのリソースやすべての政治的意志にさえもそれを複合できないようにさせる。

そして人々の間の暗号化の道は共に噛み合って、外なる国家の圧政的な力から自由な地域を作る。大規模傍受からの自由。国家の統制からの自由。

このようにして、人々は自らの意志を、総動員された権力と対立させ、勝利することができる。

暗号化は物理法則の具体化であり、国家の虚勢も、国際的な監視ディストピアも意に介さない。

(中略)

暗号は、究極の非暴力な直接行動である。

出典 : ジュリアン・アサンジ『サイファーパンク インターネットの自由と未来』

世界が一つに収斂し、権力が集中化していく。

その抵抗として、ひとりひとりが「暗号化」によって自らの自由を守る。これは宇宙的な法則なのだ、とアサンジは語る。

 

サイファーパンクとビットコイン

こうした「サイファーパンク」の思想は、仮想通貨(暗号通貨)であるビットコインにも深い影響を与えた。

通貨がデジタル化した現在、通貨交換のためには、ほとんど必ずと言っていいほど間に銀行が介入し、政府はその情報を把握することができる。

政府が、意にそぐわない機関の資金流入を止めることも可能となる。

ビットコインは、暗号技術によって、この権力の「不当」な介入に抵抗する力を持っている。個々が、「ビッグブラザー」に情報を明け渡すことなく、「自由」に価値の交換ができる。

もちろん、その「自由」には、たとえば非合法物質の取引サイトである「シルクロード」のような悪用の危険性が常に並存する。

 

参照 : 絶対に近づいてはいけない「ダークウェブ」強すぎる匿名性が生んだ闇

 

シルクロードは、Googleの検索にも引っかからない闇サイトで、違法薬物の他、児童ポルノや兵器、殺人の請負まである。その際に使用される通貨として、「ビットコイン」が使用された。

運営者であるロス・ウィリアム・ウルブリヒトは、FBIの捜査によって逮捕され、仮釈放なしの終身刑を言い渡されることとなる。

ちなみに、ビットコイン以外に人気の仮想通貨として「リップル(XRP)」がある。

リップルは、世界中の銀行との提携を進めていることから「現実的戦略的である」という好意的な評価もある一方で、それはビットコインやサイファーパンクの思想とは真逆であり、「ビッグマネーと寝た」といった批判も多い。